SSブログ

池田圭 著 音の夕映 [書籍・雑誌]

池田圭 著 音の夕映
kei_ikeda_1.jpg
日本オーディオ界の重鎮 故 池田 圭 氏の著書『音の夕映』です。
この本の中に、アイデンの12cmフルレンジユニットの名機AF-50シリーズに関する文章がありました。

アイテックス・モデル五〇型に題す。
「僕はこの年になって初めてこの小さなスピーカーを作った。・・・・・・人生は余りに短か過ぎる。」
そういう意味の自画自賛を書いたのは僕五八歳の春であった。
この一二センチが、製造元であるKKアイデンの名によるよりも、いわゆるオーナー商品として、他社のブランドで好評を博している物が多い。
製造元であるKKアイデンでは今日のところ普及形をAF―五〇Pと呼び、特製品をAF―五〇Xと名付けている。
ヴェダァー五aと呼ぶのはAF―五〇X型をバス・レフ箱に蔵めた製品であるが、同社の清水淳氏を初めとする技術部の数年に渡る努力研究の集積である。
小なりと雖も、WE、アルテックの音質を伝えているや否や、一聴に及ばれんことを。(270-271頁)

私が所有するSX-111Dは、OEM供給されたAF-50シリーズの廉価版が使用されています。
そのカラッと乾いたサウンドは、WE、アルテックに共通するところかも知れません。



また、この本にはAF-50シリーズと同様、開発に携われたビクターの名機SX-3に関する文章も収められています。

SX―三 絶賛の辞
曠世の美声に恵まれ、よき師を得、日夜精励すると雖も、スタアの座に着くことは難い。
オペラ史上、プリマ・ドンナと呼ばれた人々は、名歌手であったと共にスタアたるべき花の素質を持って生まれた人たちであった。
オーディオ機器のような生命のない器物にも、銘器と呼ばれ、名作と讃えられる作品は、設計制作が正しく、諸特性の優秀なことは言うまでもないが、それ以上に、人をして魅了し心服せしめる何物かがある。
日本ビクターの最新作SX―三型スピーカーは、一聴してこれ等世界的名品に通ずる或る物を感ぜしめる。
世紀のスタアはステージにその姿を現わすだけで、人びとの期待と感動を呼ぶ。
・・・・・・僕はこれをしるすのに、SX―三型を大和工場から自分のスタジオに移したのである・・・・・・。
未だ音を発せず、此時声無キハ声有ルニ勝ル。この詩がひしひしと迫って来る。只聞く。胸中にかけめぐる万雷の拍手を。

これは四七年日本ビクターのSX―三が予想を上廻る世評と桁違いの売行を示した秋に書いたものである。
このスピーカーは当時大和工場の鈴木健氏の英断によってプロゼクト・チームが組まれ、林正道氏の情熱と執拗過ぎると思われる程のよい音への探求に依って作られた逸品である。
故北野善朗氏の表彰するところとなり記念バッジが作られ、第一号は滝沢千鶴子さんに贈られた。その技能が高く評価されたからである。
第二号は僕の戴くところとなった。これは多分昭和初年の英マクラハラン氏の故智を借りて、ドーム・スピーカーにカッパー・リングを応用せしめたこと、ウェスタン・エレクトリックを範とした強靭なヴォイス・コイル・ボビンを起用せしめたこと、第三にその音質が独シーメンスのクラングフィルム・オイロッパ号に似るに至るまで発売を阻止せしめる程の圧力をかけたことに依るものであろう。(263-265頁)
タグ:AF-50P 池田圭
nice!(3)  コメント(2)  トラックバック(0) 

nice! 3

コメント 2

そらへい

ビクターSX-3、
白木のボディが印象的でした。
懐かしいですね。
オーディオに熱心だった若い頃の
思い出に残る名機の一つですね。
by そらへい (2010-10-03 21:28) 

coregar

そらへいさん、いつもお世話になります。
私が実際に見たのは、SX-3シリーズのⅡかⅢだったっと思いますが、白木のボディに加えて、パンチングメタルの付いたユニットむき出しでサランネットの無いデザインは、とにかく目立っていた覚えがあります。
by coregar (2010-10-04 07:03) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

(当サイトはAmazonのアフィリエイトリンクを含みます)